コロラドロッキー山スキー

日程: 2023年4月29日〜5月14日(16日間
参加者:会員1名、非会員2名(うち1名は前半のみ)

コロラド州のロッキー山脈には、アメリカの3大トレールのうちの一つ、大陸分水嶺トレール(Continental Divide Trail)が走っています。デンバーやサライダを拠点に、日帰りでこれらの山々を登っては滑る山スキーに行ってきました。滑ったピークは下記の図の赤字のピークで標高4,000m前後の山々です。

4月29日
 セントレア-成田-サンフランシスコ-デンバーと飛行機を乗り継いで目的地へ。デンバー空港でレンタカーを借りました。
飛行機から見たロッキー山脈。これからの山行に心が躍る景色です。

4月30日
 お天気が良いので、時差ボケで眠いのを我慢して早速山へ向かいます。デンバーからフリーウェイ(Interstate 70号線)を西へ1時間ほど走ったところにあるHerman Gulch登山口(英語では登山口をTrail Headという、以下TH)からMt Machebeuf (3,903m) に登りました。森林限界を越える標高3,500mあたりから息苦しくなりますが、なんとか頂上まで辿り着きました。雪質はまずまずで、滑降を楽しむことができました。
デンバー郊外のキャンプサイトにチェックインし、5月5日までここに滞在しました。コースタイム:
TH 8:15 — 11:55 頂上 12:10 — 13:40 TH

フリーウェイを西へ進むとロッキーの山々が見えてきます。
コロラドらしい美しくも雄大な景色の中のハイクアップ。徐々に息苦しくなってきます。
山頂からの展望。周りの山々には楽しそうな斜面がいっぱい!
ゲレンデよりさらに広大なバーンに、3人それぞれキレイなシュプールを描くことができました。
滑っても滑っても、快適な滑降が続きます
THで現地の山スキーヤーと交流。雪質や登高ラインの情報などをいただきました
キャンプサイトの様子。各サイトには電源コンセントがあり、トイレ、コインシャワーなどの設備もありました。山から帰ったらシールを乾かし、スーパーで買ったとっても安くて美味しいアンガスビーフを焼いて、地ビールを飲むのが日課になりました。

5月1日
 今日も快晴。昨日Mt Machebeufから遠望する事ができたKelso Mt (4,016 m)の北面のクーロワールを登って滑ることに。気温が高いせいか、雪がシールに付着して登りにくいのですが、かと言ってツボ足ではもぐって消耗します。下降も、いわゆるモナカ雪で滑りにくく、ジャンプ系のターンで何とか下まで降りました。
コースタイム:
TH 7:50 — 11:45 最高到達点 12:45 — 13:55 TH

今日登るクーロワールの全景が見えてきました。なかなかかっこいい。
細い「喉」の部分の登り。古いシュプールがありましたが、ここ1週間ほどは誰も滑っていないようです。
上部の急斜面の滑降。モナカ雪をジャンプ系ターンで何とか滑ります。どんな雪でも滑れなければ山スキーはできません

5月2日
 この日は天気予報だと曇り時々雨または雪だった(実際には雨はほとんど降らなかった)ので休養日としました。滞在していたキャンプサイトは、ベアークリークレイク公園の中にあり、歩いて公園を1周するとほぼ1日かかるような広さです。朝、公園内を2時間ほど散歩しました。乾燥地帯なので木はあまり生えていませんが、いろいろな野生動物に会うことができました。
 その後、レッドロックスという野外劇場に行きました。ステージの背後や客席の横には覆い被さるように赤い岩石の崖があり、自然の地形が音響効果を高めています。デンバーをこよなく愛したジョン・デンバーやビートルズのコンサートもここで行われたそうです。
 午後はダウンタウンにあるデンバー自然科学博物館に行きました。19世紀のゴールドラッシュでできた町らしく、鉱山・鉱石・鉱物に関する展示がとても充実していました。北アメリカの野生動物に関する展示も迫力がありました。

レッドロックス野外劇場。ステージの裏手には覆い被さるように赤い岩が迫り出していて、音響効果を高めている。

5月3日
 今日の登攀対象はQuandary Peak (4,350 m)。ここはポピュラーなコースらしく、平日にも関わらず、何パーティーかの登山者・山スキーヤーに出会いました。コロラドロッキーには14,000フィート(約4,200m。アメリカで使われている単位は、フィート、マイル、華氏などで我々にはわかりにくい)を越えるピークが53あり、Colorado 14ersと呼ばれています。Quandary Peakはそのひとつ。途中、細い尾根を歩く部分があり、雪が途切れそうになりましたが、なんとかスキーを脱がずに通過できました。頂上の下のやや傾斜のある斜面は、アイゼンを履いてシートラーゲンしました。雪質は大変よく、広大な斜面で快適な滑降を楽しむ事ができました。
コースタイム:
TH 7:00 — 12:00 最高到達点 12:35 — 13:50 TH

森林限界近くの尾根を登る。頂上が見えてきました。
登ってきた尾根と対岸の山並み。雄大な風景は見飽きることがありません
雪もよく、斜面もよく、景色もよく、快適な滑降を楽しむことができました。

5月4日
 天気予報では悪天とのことだったので休養日としました。午後天気が良くなってきたかと思うと、夕方、雷を伴った夕立が降ったりして、天気は安定しませんでした。山は雪が降っていることでしょう。

5月5日
 朝、テントを撤収してキャンプサイトを後にし、Interstate 70号線を西進します。トンネルは通らず峠道を走ってLoveland峠へ車で登りました。峠からの眺望は素晴らしく、周りの斜面はどこを滑っても楽しそうです。雪質はハードバーンの上にうっすらと新雪が積もった状態で、とても滑りやすかったです。
 短いルートを2本滑った後、サライダという街まで約2時間のドライブで移動しました。この街の小さなロッジにチェックイン、2段ベッドが並ぶドミトリーに落ち着きました。
コースタイム:
Loveland Pass 8:00 — 8:40 滑降 8:55  — 9:00 登り返し 9:30 — 9:40 滑降 10:00 — 10:40 Loveland Pass

標高11,990フィート(約3,600m)のLoveland峠。恋人達の聖地のような地名の看板の前に不細工な日本人男性二人。
峠からの眺望。滑りたくなる斜面がいっぱいです。尾根の上は雪が吹き飛ばされてトレールが出ていました。
峠から少し登った稜線上から滑り出しました。楽しい!
今回泊まったサライダの宿、ピースロッジ。

5月6日
 前半だけで帰国するHさんが登れる最後の日なので、GリーダーとHさんは、難易度の高いMt Aetnaのグランドクーロワールに挑戦することにして、僕はサライダの街でゆっくり休養することにしました。まず、街の東にある「S」と書かれた丘(Tenderfoot Mt)に登ってみました。頂上からはロッキーやサライダの街が展望できました。川沿いに公園があり、市民や観光客が思い思いのアクティビティーを楽しんでいます。川の中に人工的に作られたウェーブでサーフィンを楽しむ人がいて、いかにも海から遠く離れたコロラドらしいなと思いました。

サライダの町外れにある町のイニシャルの「S」が書かれた山。1時間程で登ることができます。
川の中に作られた人工のウェーブでサーフィンを楽しむ人。

5月7日
早朝、サライダを出てHさんをデンバー空港まで見送り、その後、Dinosaur Ridgeという恐竜化石や恐竜の足跡化石を見学できるサイトに行ってみました。ここは、カナダのドラムヘラーと並んで、世界的に有名な恐竜化石産地で、恐竜マニアには有名な場所です。

Dinosaur Ridge全景。地層の傾斜と斜面の傾斜が平行なので、地層が堆積した時の水平面を観察することができます。
地層に残された恐竜達の足跡。多くの種類の恐竜が歩き回ったことがよくわかります。黒いのは、足跡をわかりやすくするためにつけられた人工的な着色です。足跡が黒いわけではありません。

5月8日
 この日はArgentine Peak(4,187m)に行きました。凍結したいくつかの氷河湖を経由して登る山です。僕は3970mでリタイアです。雪質は良く、湖を巡りながら滑ったりシールで登り返したりしながら戻ってきました。登山口で、もう午後2時というのに、「今からちょっとそこまで」という感じの地元スキーヤーと入れ違いになりました。
コースタイム:
TH 7:15 — 12:00 最高到達点 12:25 — 14:10 TH

思わず歓声が上がる斜面の滑り。
湖に向かって滑り込みます。
湖の湖岸をシールで散歩。この湖は氷河湖だと思っていましたが、前方に見える地すべり堆積物?が天然ダムをつくってできたせきとめ湖のようにも見えます。
 
降りてきて帰る準備をしていたら、地元(ジョージタウン)の山スキーヤーと会いました。聞けば、今からちょっとそこのピークまで散歩に出かけるとのこと。滑走面が鱗状になったテレマークスキーを履いていました。
 

5月9日
 この日はJames Peak(4,056m)に登りに行きました。昨日とよく似た氷河湖(Saint Mary’s Lake)を経由して登る山で、ここの湖も凍結していました。湖の手前で少しスキーを脱ぎましたが、あとはずっとスキーが使えました。途中、平原のような平坦地があるのが特徴です。標高3,800mぐらいからは、高度障害のため息もゼーゼーして辛かったですが、なんとか頂上まで行くことができました。
 頂上で、近くの学校の数学の教師をしている人とその息子(なんと今日が13歳の誕生日!)と一緒になりました。息子の誕生日を記念しての登山だそうです。雪質もよく快適な滑降が楽しめました。途中の大平原も緩い降り斜面で、雪を拾いながらスキーを担がずに帰ることができました。
 THに近い湖では、わずかに氷が溶けた湖面を利用して、頂上で会った親子がテンカラで釣りをしていました。ちゃんと釣れていたのにはビックリ!
コースタイム:
TH 7:50 — 8:25 Saint Mary’s Lake 8:25 — 13:40 James Peak 13:55 — 14:15 TH

大平原を横切り最後の急登にかかります。
快適な滑降。今日も絶好調!
最後は湖に向かって滑り込みます。
氷の溶けたわずかな湖水面を利用してテンカラ釣りを楽しむ親子
ちゃんとトラウトが釣れていました!

5月10日
 朝、テントを撤収し、Monarch山塊に移動しました。Monarchとはメキシコからカナダまで移動する渡り鳥ならぬ渡り蝶々ことです。この蝶々が移動の途中に越える峠がMonarch 峠です。Monarch山塊にある、その名もバタフライハウスという大陸分水嶺トレールを旅するハイカー御用達の宿にお世話になることにしました。夏はハイカーで賑わうとのことですが、今は我々以外に客はいませんでした。この宿は宿泊費が決まっておらず、寄付で運営されていて、若い男の子がひとりで管理人をやっていました。
 Monarchに移動する途中、Loveland峠の近くにあるCupid Peak(3998m)に登りました。Arapahoe Basinスキー場(まだ営業している)の駐車場に車を停めて、6号線を渡り、Cupid Peakにとりつきます。樹林帯を抜けるとDave’s Waveと呼ばれるハーフパイプのような沢地形となります。雪が固くなったので、アイゼンをつけてシートラに。逆くの字型の沢で、上部は部分的にしか雪は付いていません。
 頂上に着いてしばらくすると、それまでの快晴が嘘のような黒雲が近づいてきました。あれよあれよという間に雷が鳴り、雹が降りはじめ、森林限界を越えたピークの上にいた我々は生きた心地も無く大急ぎで、なるべく低い姿勢で森林限界の下に滑り降りました。
コースタイム:
Arapahoe Basinスキー場 8:15 — 12:00 Cupid Peak 12:20 — 13:20 Arapahoe Basinスキー場

ハーフパイプのようなDave’s wave。
お昼頃まではこんなに良いお天気でした。
ところが一天にわかにかき曇り、このありさまです。
今日明日の宿はバタフライハウス。小さな小屋だけど、快適でした。

5月11日
 朝起きると天気予報通りの雪。15cmほど積もっています。午前中はずっと雪、午後は霧雨となりました。今日はバタフライハウスでゲームなどしてのんびり1日過ごします。

コロラドに来て初めての本格的な降雪。
ゲームなどして1日過ごしました。左が管理人。夏になるとラフティングのガイドをしているそうです。

5月12日
 降雪直後ということもあり、Monarch Mountainスキー場周辺のメローなラインを滑ることにしました。まずは営業を終了したスキー場へと向かい、ゲートの横に駐車し、ゲレンデをハイクアップ。ゲレンデトップで様子をみるも、ガスは晴れず、昨日降った雪がその後の雨により水分量が増し、夜の寒さで凍り、典型的なモナカ雪になっていました。結局、ゲレンデを1本滑ってこの海外スキー登山は打ち止めとしました。
 デンバーへはコロラドスプリングス経由で戻ることにしました。コロラドスプリングスの近くのGarden of the gods(神々の庭)という露岩地域の観光地に立ち寄りました。赤色砂岩・礫岩の奇岩が立ち並ぶ観光地でした。
 デンバーに13:30頃に到着。ナビミスなどもあり、予約したホテルになかなか行き着けず、早く着きすぎたと思ったけど、結局、チェックイン開始時刻になってしまいました。
コースタイム:
Monarchスキー場ゲート 5:10 — 6:30 スキー場トップ 6:35 — 7:10 Monarchスキー場ゲート

ガスの中、ゲレンデを登る。
滑るにはとても難しいモナカ雪。
Monarch Mountainスキー場の看板。ロゴは蝶々

5月13〜14日

 3時に起床し、ホテルをチェックアウトし、レンタカー会社に。レンタカーの返却は、キーを車の中に残して駐車するだけ! レンタカー会社のシャトルバスで空港へ。空港では、まだ4時半だというのにセキュリティーチェックの長い列ができていました。早めに出ましたが、そこそこ良い時間になってしまいました。たいした遅れもなく、行きと同じ経路で順調に日本に帰国できました。

おわり